この記事は、映画『桜色の風が咲く』(2022)のネタバレ含む感想記事です。
NHKのEテレにて放送されていたこちらの映画。
個人的に吉沢悠さんブームで、軽い気持ちで観てみたのですが、とんでもなく素晴らしい映画でした。
ドキュメンタリーっぽい感じでもあったので、実話なのかな?と気になりながら観ていたらやっぱり実話でした。
凄い…!
としか言えません。
福島智さん、何て凄い方なのでしょう。
でも実話だったら、もっと有名になって国民全員が知っているべき方だよなぁ…なんて思いながらも観ていたのですが。
何度も言いますが、それくらい凄い方なのです。
個人的に凄いなと思ったのは、両眼とも失明したあとに、とても前向きに盲学校に向かっていたこと。
お母さんの心配をよそに、とてもひょうきんで冗談も言うくらいで。
失明ってとてつもなく大変なことでしょうに、新しい生活にもすぐ馴染んで、同じ寮生の山本(山崎竜太郎さん)ともすぐ仲良くなって。
もちろん映画を作る上で、時間の都合的にも描けなかった部分もあると思うので、落ち込んだりといったことも当然あったはずです。
それでも失明くらいじゃめげないぞ!と頑張っていた智さんに訪れた試練はとても残酷なものでした。
この世から光も音も失ったらどう生きていったらいいのでしょう。
このときの智さんは聴力を失うのを必死に阻止しようと努力もいっぱいしました。
でもそれが実らなくて、さすがの智さんでも自暴自棄になってしまったのです。
それでも這い上がれたきっかけは何だったのでしょう。
1つはお母さんの指点字ですよね。
指点字なら点字ライターがなくても読めるし、何ていうか人間の指のあたたかみとかも伝わってそれも力を与えたのではないかなと思います。
そして山本が教えてくれた、自分には思索があるということ。
それに気づいて前に進めた感じでしたよね。
自分の境遇に決してめげないで、まわりに感謝し、自分の役割もきちんとこなす。
何てできた方なのでしょう。
そして、お母さんも凄いと思いました。
代われるなら代わってあげたいって何度思ったことでしょう。
でもそのとき、思ったはずです。
代わったとして自分に耐えられるのだろうか。
想像してみて、つらくなったと思います。
それほどシビアな境遇にいる息子に代わってあげられることもできず、何もしてやれない。
これほどしんどいこともないと思います。
もう力になることしかできない、応援することしかできないのだけど、息子が立ち直れない状態のときが一番しんどかったと思います。
応援する言葉さえかけることを許されない。
そんな中で指点字を思いついて、心を通わせただけではなくこれからを生きていく希望を与えたことがとても素晴らしかった。
「さ と し わ か る か」
ジーンときました。
暗闇の中にいる彼にとってどれほど心に響いたかわかりません。
目が真っ赤になった息子を、年末休みで病院に連れて行ってあげられなかったのを何度も悔やんだでしょう。
あのときもっと早く気づいてあげられたら…もっと早くに病院に連れて行ってあげていたら…
何度も思ったと思います。
何度も自分を責めたと思います。
でもこれって原因なんだったのでしょうか。
病院行くのが遅れて手遅れてしまったのか、医者の診断ミスなのか…治療ミス…?
聴力を失ったのは、薬の副作用なのかなぁという感じでしたが、はっきりとした描写はありませんでした。
でも原因がわかったところで、失ったものを取り戻すことはできないですよね。
悔しい思いとか本人も家族もあるでしょうに、それでも現実に向き合った智さんやお母さんはとても素晴らしくもっと多くの人にこの方のことを知ってほしいと思いました。
智さんを演じられた田中偉登さんや、お母さんを演じられた小雪さんの演技も大変素晴らしかったです。